最終更新日: 更新日: 2024年9月14日 作成日:2024年9月14日

聖天宮(聖天島)|上野・不忍池の小島 由緒と開扉情報(東京都台東区)

巳成金大祭の朝の不忍池辯天堂(弁天橋より)

2024年9月14日撮影

聖天宮(しょうてんぐう)は、不忍池辯天堂の北側にある小島(通称:聖天島)に鎮座するお堂です。
江戸後期の『江戸名所図会』にもこの小島が描かれ、古くから聖天(歓喜天)の祠が記されてきました。現在も辯天堂境内の一角として案内されます。

「巳の日」に開扉・開放されるタイミング

通常は小島へ渡る小橋の扉が施錠されていますが、巳の日(十干十二支の「巳」の日)のご縁日に開扉・開放されることがあります。巳の日は辯才天のご縁日でもあり、辯天堂の法要に合わせて島への立ち入りが案内されるケースを確認しています。
筆者は巳成金大祭の際に参拝し、島内の写真を撮影しました。

  • 所在地:台東区上野公園2-1(不忍池 中央の島・辯天堂の北側)
  • 最寄り:JR「上野」徒歩約6分/東京メトロ銀座線・日比谷線「上野」徒歩約8分/京成「京成上野」徒歩約3分
  • 備考:平常時は小橋が施錠。開放は巳の日など縁日・行事時のみの場合があります。

聖天宮の由緒(なりたち)

聖天島の小橋と社殿(正面)

2024年9月14日撮影

上野山の造営を主導した天海僧正が、不忍池を琵琶湖、島を竹生島に"見立て"た際、弁天祠よりも前からこの小島に聖天が祀られていたと伝わります。江戸の地誌には、
「本社(辯天堂)の北、小島に聖天を勧請。もと弁天の祠があった旧地で、島の地主神として崇められてきた」
旨の記載が見え、島そのものの守護として信仰されてきました。

島に渡ると正面に社殿があり、賽銭投入用の小孔が設けられています。お賽銭を納め、合掌・一礼して参拝します。

ご祭神:聖天(歓喜天)

聖天宮の社殿(正面から)

2024年9月14日撮影

聖天(しょうてん/歓喜天・大聖歓喜天)は、象頭人身で知られる天部の尊で、日本では夫婦和合・縁結び・子授け・商売繁盛・除災招福などの現世利益で信仰を集めます。
浅草・待乳山聖天の例でも夫婦和合・商売繁盛が象徴的に語られ、巾着や大根がそのシンボルとして用いられます。聖天宮でも一般的には同様の信仰理解で差し支えないと思います。

島内の多臂石像について

左奥に安置された多臂石像(頭部欠損)

2024年9月14日撮影

聖天宮の左奥には、頭部が欠損した多臂(現在は6臂が確認できる)の石像が安置されています。持物の痕跡や水辺の文脈から、弁財天系の境内石像と見られますが、欠損のため詳細は不詳です。
※聖天(歓喜天)のご本尊は堂内安置で、開扉時に拝観されます(屋外石像=ご本尊ではありません)。

狐像と手水鉢

島奥に置かれた狐像と手水鉢(竹簀付き)

2024年9月14日撮影

島奥の小さな狐像は、稲荷(荼枳尼天)信仰の名残とみられるもの。境内守護の小祠として併存している可能性があります。隣の石は手水鉢で、手口を清めるための簡易の手水処ですが閉じてます。

江戸名所図会

江戸名所図会:不忍池 中島弁財天社(挿絵)

江戸名所図会:本文に見える聖天宮の記述

江戸名所図会:本文拡大(本社北の小島に聖天宮を勧請)

出典:『江戸名所図会 7巻 [14] 第14-15冊: 巻5』 国立国会図書館デジタルコレクション( 該当ページ

図会では、不忍池の中島に辯天堂が描かれ、その北側に「聖天」の文字が見えます。本文には、
「本社(辯天堂)の北、小島に聖天宮を勧請。もと弁天の祠の旧地で、島の地主神として崇められる」
旨が述べられてます。

「御嶽講」の奉納碑

御嶽講の奉納碑(御嶽山・元同行・寛真・信者新蔵・文久三年癸亥九月)

2024年9月14日撮影

島内に立つ御嶽講の奉納碑。中央に「御嶽山」、右側に役職「元同行」と人名「寛真」、左側に「世話人」。中央部には「信者 新蔵」とその年齢と思われる「八十一」の刻字が見えます。建立は文久三年(1863・癸亥)九月。江戸末期に盛んだった御嶽信仰の講中が、祈願成就と講の繁栄を願って奉納した記念碑です。

長文の碑文

島内の長文碑(蓮葉茂也・芙蓉開也・春夏之季・涼風...の語が判読)

2024年9月14日撮影

島の一角に建つ長文の碑。AIに読み取ってもらい、本文からは「蓮葉茂也・芙蓉開也」「春夏之季」「涼風...」などの語が読み取れ、不忍池の蓮の景と四季の趣を讃える叙景文が刻まれていることが分かります。
次回、題名部と左端の細字(年月・発起人)を正面接写して、全文の翻刻に挑戦予定です。

刻字のある自然石

刻字のある自然石(詳細不詳)

2024年9月14日撮影

表面に刻字の痕跡が見える自然石。現状では判読困難のため再確認します。

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